如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

アニメ業界を取り巻く環境を丁寧に解説、「このままだと日本は米国資本に圧倒される」

 

製作委員会は悪なのか? アニメビジネス完全ガイド

2018年5月27日

アニメ業界の置かれた現状とその構造を分かりやすく解説した本である。

 タイトルに「製作委員会は悪なのか?」とあるが、その製作委員会についても、その成り立ちや役割、報酬
等について解説、委員会方式が普及したのは、ヒット作の量産を狙う「日本のマンガ雑誌」の思考法が影響し
たと考察している。もちろん出資額の小口化による出資リスクの低下という側面の方が大きいとは思うが。

 その上で、製作委員会方式の導入でアニメの制作費は上がっており、「製作委員会から制作会社への支払い
が不十分である」などの製作委員会悪玉論は誤認識だとしている。

 これに関連して昨年、新聞などのメディアが「アニメーターの平均年収110万円」と報じ、そのブラックぶ
りが注目を集めたが、本書ではその実態についても触れ、110万円というのは「動画」という仕事で、デジタ
ル化が進むアニメ業界で唯一「手作業」が取り残された業種であり、70%以上は海外への業務委託が実情。
今後は動画生成システムなどが導入されれば、「動画」職はなくなると予想している。

 他にもアニメ制作の仕組みとして、「制作」と「製作」の違い、「組合制度」のアメリカと「家族制度」の
日本との報酬体系の格差などのほか、海外への業務委託による「アニメ空洞化論」については非現実的と断じ
ている。

 最後に、筆者が本書で最も主張したいのは、「日本アニメは国内志向が強く、ディズニーのように最高のク
オリティのコンテンツを、最強の流通網で、世界中のユーザーに提供するという発想がない。このままでは海
外事業者に圧倒される」ということだろう。

 ここ数年は中国を中心にライセンス料の支払いが急増しているので業界は潤っているが、中国政府のさじ加
減一つで構図が激変する可能性もあるし、NetflixやAmazonなどの外資がその強固なネットワークを背景に、
巨額の資金を投入して良質なオリジナルコンテンツの提供を続ければ、「世界のアニメビジネス」という観点
では国内勢が対抗するのは極めて困難だろう。

 筆者の言うように、制作会社と製作委員会が一体化し、アニメーターだけでなくプロデューサーなどのビ
ジネスマンが多面的に事業に参加し、付加価値の高い作品をビジネスに乗せることが今後のアニメビジネスに
不可欠なのは間違いないはずだ。