如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

老後の低収入を補う資産運用、節約の「小技」を幅広く紹介

 

2018年10月7日

 本書は、定年後の収入をあまり当てにできない人向けに、資産運用や節約のテクニックなど紹介するという
のが趣旨である。

 この手の本は森永氏のお得意分野のひとつではあるのだが、他にもファイナンシャル・プランナー(FP)な
どが、多種多彩な本を出しており、差別化が難しくなっている分野だろう。

 この背景には、老後の大切おカネを運用するに当たっての大原則「安全性を重視してリスクは許容範囲で」
となると投資商品は「変動利付10年国債」を中心に限られてくるし、一方で節約の手法もめぼしいものは「株
主優待」「ふるさと納税」など既に各メディアで紹介されていて、目新しくて効果の大きいものを見つけるの
は難しいからだ。

 本書も例外ではなくて、すでにメディアや雑誌、書籍などで紹介された内容も含まれており、「老後のおカ
ネ」に関する本を読んだことがある人には既読感はあるだろう。

 とはいえ、森永氏は当然ながらその辺の事情にはプロとして詳しい訳で、まだ世間にあまり知られていない
「テクニック」を色々紹介している。もっとも先述した事情もあって「小技」が中心ではあるが。

 まずは資産運用。著者は物価連動国債を取り上げている。これはインフレに対応して償還時の元本が増える
債券で、逆にデフレになっても元本は保証されるというまさに個人向けの国債なのだが、現在は個人には販売
されていない。投信経由で購入は可能だが、手数料等を考えると投資対象とはなりにくい。今後財務省の動向
に注目して販売再開を見逃さないようにしたい。

 直接運用とは関係はないが、参考になったのは「マイナンバーカードは慎重に」(P108)。マイナンバー
カードを紛失して、運悪く悪徳名簿業者の手に渡ると、マイナンバーから「紐づけ」されて個人情報が丸裸に
なる危険性があるという話。すでに著名人の家族構成や保有する車種などを網羅した名簿が出回っているとい
う。私も、財布に運転免許証などと一緒にしていたが、今日から自宅保管することにした。

 一方の「節約」。まずはシニア層の買い物は毎月15日がお得という話。これは言うまでもなく年金支給日が
偶数月の15日という事情がある。ただ優遇される店舗は意外に多く、イオン、マルエツ、ライフなどのスーパ
ーのほか、東武百貨店池袋店、ツルハドラッグ、トイザらスなどでも実施しているそうだ。高齢者をターゲッ
トにした売上アップや新商品の企画は今後も拡大するのは確実だろうし、注意しておきたい。

 また、ややセコい内容ではあるが自動車を買う場合、軽自動車が税金面で有利なのは知られているが、著者
のお薦めは2015年3月までに登録された軽自動車。これは現在年額1万800円の軽自動車税が、この時期まで
に登録された車であれば、以前の税額7200円が将来に渡って適用されるからだ。

 ただ私自身は、軽自動車への乗り換えは考えているが中古車は対象外としている。というのも自動ブレーキ
などの安全装置が軽自動車に普及し始めたのがここ数年で、ただでさえ構造的に小型・普通車よりも事故に弱
いとされる軽自動車なので、年間数千円をケチるなら最新の安全装置が付いた新車がお薦めだ。さらに言えば、
シニア層は危険回避などの運転技術が衰え始めるだけに注意してほしい。

 第四章は「生きがいづくり」。ここで個人的にオススメしたいのは、「自転車革命」の章で紹介される「フ
リーパワー」。これはスーパーのオリンピックの子会社が開発した自転車のアシスト装置なのだが、私自身も
使っている。
 簡単に言えばシリコンゴムの特徴を生かして、ロスしていた漕ぐ力を推進力に転換して生かすという技術で、
実際に乗ればわかるが、走り出しの軽さと坂道で楽になる感覚がすぐに実感できる。ゴムも強度によって3種
類から選べる。今乗っている自転車に取り付けることも基本的に可能だ。
 健康面からも膝に負担のかかるジョギングよりも、自転車の方がシニアの運動には向いていると思う。しか
も徒歩よりも行動範囲が大きく拡大することで、目にする景色も変わってくるので脳が刺激され、精神的にも
老化予防に効果があるのではなかろうか。

 以上、本書の特徴となるような事例を中心に紹介したが、まだ他にも参考なるアイディアは結構掲載されて
いる。

 資産運用や節約のテクニックやノウハウを熟知した人には物足りないかもしれないが、いわゆる最新の「小
技」にまでこだわってみたいと思う人には、税別780円という価格は新書としては安く、無駄とは感じないと
思う。

【追記】
 趣味のひとつとして、いかにも森永さんらしい「ペットボトルのフタの収集」が紹介されている。興味のな
い人にとっては、まさに「実もフタも」感じられない内容だが、そこは個人の嗜好ということで多目に見てほ
しい。